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音階と周波数


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[音階と周波数]

作成:2008年12月10日
更新:2014年02月14日

ちょっとしたきっかけで、音階と周波数の関係を調べてみました。JBL の PA用スピーカー JRX115 を改造して低音の音圧テストを行うため、周波数毎の WAVファイルを作成したのですが、音階毎の正しい周波数で WAVファイルを作成するには、音階と周波数の関係を知る必要がありました。

そこでいつものようにインターネットで調べてみると、意外にも同じ 7音階でもいろいろな音律があって、音律が違えば対応する周波数が異なることを知りました。音楽理論に詳しい方には当り前のことなのでしょうが、日頃聴いている音楽がとても複雑で微妙な音をコントロールして演奏されているものと知り、驚いています。

ということで、ちょっと勉強したことを紹介することにしました。とはいえ、素人の浅知恵、とんでもない間違いを書くかもしれませんので、間違いがあったら御指摘をお願いします。

音律と音階

音律とは、音階と音程を決める方法のことですが、7音階(半音で言えば12音階)の代表的なものとして、平均律、純正律、ピタゴラス音律があります。各々の音律を説明する前に、前提になる7音階での音程の概念を説明します。ド〜ソの音程は全音3つと半音1つですが、これを完全5度といいます。ソ〜ドは全音2つと半音1つで完全4度といいます。完全5度と完全4度を合わせるとちょうど1オクターブになり、その周波数比はちょうど 2倍になります。次にド〜ソの間の音程ですが、ド〜ミは全音2つでこれを長3度、ミ〜ソは全音1つと半音1つでこれを短3度といいます。

ピタゴラス音律

音律の中で、一番古いのがピタゴラス音律です。ピタゴラスは、直角三角形のピタゴラスの定理(長辺の2乗=他の辺の2乗の和)でだれでも知っている古代ギリシャの数学者です。三角形の辺の長さが 3:4:5 になっていると、これは直角三角形ですが、これに似て、音程を周波数の単純な整数比で決めるのが、ピタゴラス音律です。ド〜ソ(完全5度)の場合ドとソの周波数比が 2:3、ソ〜ド(完全4度)の場合ソとドの周波数比が 3:4 になります。ピタゴラスの時代では周波数という概念はなかったでしょうから、本当は音を出す弦の長さの比(周波数の比の逆)で決めたのでしょう。完全5度も完全4度もこの周波数比にすると2つの音が綺麗に協和するという音律です。

では次に、レ、ミ、ファ、ラ、シの周波数の決め方です。レ〜ソは完全4度です。したがって、レとソの周波数比は 3:4、これでレの周波数がきまります。今度はレ〜ラ、完全5度ですからレとラの周波数比は 2:3、これを繰り返せばシ、ミ、ファも決まります。

実はピタゴラス音律は、バイオリンの調弦法そのものなのですね。後で説明しますが国際高度というのがあって、A(ラ)4 に相当する周波数は、440Hzと決められています(演奏家や楽団によって実際は微調整があるようですが)。まずA線を音叉などを使って 440Hzに合わせます。次に下のD線(レ)はA線と協和するように調整されます。ついでD線とG線(下のソ)、A線とE線(上のミ)も同様に協和するように調整されます。隣り合う弦はいずれも完全5度の音程なので、まがいもなくピタゴラス音律ということになります。

計算の結果を次の表に示しました。分数比は、C(ド)4 を 1 として周波数比を分数で示しています。計算法はその計算の根拠、少数比は分数比を少数に変換したもの、基準比は A(ラ)4 を 1 として周波数比を再計算した結果、Hz は基準比に 440 を掛けた値です。

  表1. ピタゴラス音律の音階と周波数
ピタゴラス音律

ピタゴラス音律は実にスマートなのですが、弱点があります。それは、ド〜ミとかミ〜ソのような3度音程の協和を配慮していない、つまり3度音程の和音は美しくないという点です。ピタゴラスの時代は単音音楽だったので、その必要がなかったというのが定説のようですね。

では現在のバイオリン奏者の方は、バイオリンソナタの美しい和音をどうやって演奏しているのでしょうか。ふむー、私もそこまでは判りません。バイオリンはフレットのない楽器ですから音程の調整は融通無碍、調弦はピタゴラス音律であっても和音のとりかたはいくらでも調整できるのでしょう。しかし確かな耳と技量がなければできないことでしょうから、あらためて演奏家の隠れた努力に敬服するしだいです。

純正律

ハ長調の主要和音は、ド・ミ・ソ、ファ・ラ・ド、ソ・シ・レ、イ短調の主要和音はラ・ド・ミ、レ・ファ・ラ、ミ・ソ・シ、ですが、純正律では、これらの和音が一番協和するように音程を決める方法です。ド〜ミのような長3度の音程の周波数比を 4:5、ミ〜ソのような短3度の音程の周波数比を 5:6 にするのが基本です。ハ長調のド〜ミ〜ソは、4:5:6 の周波数比になります。一方、イ短調ではどうでしょう。ラ〜ドは短3度ですから 5:6、ド〜ミは長3度ですから 4:5、したがってラ〜ド〜ミは 10:12:15 の周波数比になります。

ではその他の音はどうでしょうか、ハ長調でやってみましょう。まずド、ミ、ソが決まったので、ソを基準にソ〜シ〜レ(上のレ)が決まります。上のドは下のドの2倍ですからこれを基準にファ〜ラ〜ドが決まります。下のレは上のレの半分ですからこれも決まります。

次はイ短調です。まずラ〜ド〜ミが決まります。ついでミを基準にミ〜ソ〜シが決まります。上のラは下のラの2倍、上のラを基準にレ〜ファ〜ラが決まります。これで全部きまりました。

ふむー、ほんとにエレガントですね。だれがいつ頃、こんな音律を考えだしたのでしょうか。残念ながら調べた範囲では判りませんでした。きっと音律の専門書などには書かれているのでしょうね。

ところでこの純正律、一見するとすごくエレガントで和音の演奏には優れているのですが、大きな欠陥を含んでいます。それは、次の表を見て頂ければ判るのですが、ハ長調とイ短調でレの周波数比が違ってくるのです。ハ長調はソ・シ・レの和音、イ短調はレ・ファ・ラの和音を元にレの周波数比が決まっていますが、そのレの周波数比が異なってしまうのです。と言うことは、ハ長調ではレ・ファ・ラの和音は汚くなってしまいます。さらに困ったことは、ハ長調からイ短調に転調すると、レの音が異なるのでイ短調のレ・ファ・ラが汚くなってしまいます。

  表2. 純正律の音階と周波数
純正律

純正律は、ピタゴラス音律の欠陥である和音の問題を克服する方法だったのに、なんとも残念な結果です。純正律とピタゴラス音律を元にいろいろ改良した音律もあるようですが、専門的すぎるのでこれ以上追求するのはやめておきます。。。ところで、次に説明する平均律も美しい和音を作るには不完全ですし、そうするとバイオリン奏者はいったい何を基準に音程を決めればいいのでしょうか。本当に人ごとながら心安からぬ思いがします。

平均律

ピタゴラス音律にしても、純正律にしても、考え方には共通性があります。それは、音程を周波数の等比(分数比)数列として扱おうとしていることです。ただし、完全な等比数列ではなく、部分的な等比数列として扱っているのが特徴です。もともと、周波数2倍 を1オクターブとしているわけですから、これを数式で表すと

音程(オクターブ)=LOG2(周波数比)

になっています。この考え方をすべての音階に当てはめて、全ての音階の音程は周波数の等比数列になると仮定したら、どうなるでしょう。1オクターブは半音12コでできているわけですから、半音の周波数比=2の1/12乗 となるはずです。2の1/12乗を 12回掛けると 2 になりますから、ちょうど1オクターブですね。半音1コの音程を数式で表すと

半音の音程(オクターブ)=LOG2(2の1/12乗)

ということになります。LOG2(2の1/12乗)は、1/12*LOG2(2) ですから、なんのことはない 1/12 ですね。つまり、半音は 1/12オクターブ、周波数比は 1:2の1/12乗ということになります。これが平均律と言われる音程の決め方です。

計算結果を下の表に示しました。

  表3. 平均律の音階と周波数
平均律

上の表で「セント」という聞き慣れない用語が出ています。意味は 1/100 を表しています。お金の 1セント が 1ドルの 1/100 というのと同じです。注釈(*) に書いている通り、1セントは、平均律で半音の 1/100 の音程を意味しているので、微小な音程を表すのに適しているわけです。後の表では、平均律、純正律、ピタゴラス音律の差をセント値で示しています。

どうも音に関して言えば、音の大きさ(音圧)にしても音の高さにしても、物理量(音圧の場合はエネルギー量、音の高さでは周波数)に対して、人間は対数的に感じるようにできているようです。2つの音の大きさの差はデシベル(dB)で表されますが、エネルギーが 2倍だと 3dBの差ですから、

音圧差(dB)=3*LOG2(音のエネルギー比)

です。これって、音程(オクターブ)=LOG2(周波数比)とすごく似ていますよね。ふむー、我ながらすごい発見????

[2010.06.18 追記]

ちょっと、言い訳と補足です。音の大きさ、音の強さ、音圧、デシベルなどの用語を不用意に使用していることにきづいたので補足します。情報源はウィキペディアです。

音の大きさ
人間の聴覚が感じる音の強さ。
音の強さ
人間の感覚ではなく物理量で、音圧レベル(デシベル(dB)) で表される。
一般的な会話の中では「音の強さ」(本来は物理量)と言っても、「音の大きさ」(心理量)を意味している場合もあり、しばしば混同される。「音の強さ」と言われた時は、「音の大きさ」のことを言っているのかを、注意する必要がある。
 
デシベル(dB)
ある物理量を基準となる量との比の対数によって表すとき、対数として底が10である常用対数を採る場合の単位がベル(bel, B)と定義される。このベルで表される量を10倍したものがデシベルです。デシベルによる表現は、音の強さ(音圧レベル)や、電力の比較、減衰量などをエネルギー比で表すのに使用される。
ヒトの聴覚は音の大小を対数尺で知覚し、デシベルも対数尺であるが、デシベルの値はヒトの感覚と一致しない。
 
音圧レベル(dB)=10*LOG10(音のエネルギー比) になります。
LOG10(X)=LOG2(X)/LOG2(10)=0.30103*LOG2(X) なので、
音圧レベル(dB)=3.0103*LOG2(音のエネルギー比) となります。
 
前記「音の大きさ(音圧)」とか「音圧差(dB)」という用語は正しくないようですね。

平均律で決めた音階では、音程は均一です。半音の音程は 1/12オクターブ、全音の音程は 2/12オクターブ、長3度は 4/12オクターブ、短3度は 3/12オクターブ、完全5度は 7/12オクターブ、完全4度は 5/12オクターブです。したがって、純正律のように転調で音程が狂う心配もないのでどんな曲の演奏にも音程の修正は必要ありません。というか、演奏中に音程の修正ができない楽器には、これしかないのです。だからピアノは平均律なんですね。そして、ピアノは平均律の長所を採ったが故に、最高に美しい和音の響きはあきらめたのですね。

次の表は、0オクターブから 9オクターブまで、平均律による全音階の周波数を示しました。何かの時に役に立つでしょう。

  表4. 平均律の音階と周波数(全域)
平均律2

国際高度では、A(ラ)4 440Hz と決められていますが、ホールや楽団により、標準に使う周波数は違うようです。楽典No.2 国際高度と演奏高度 音叉 譜表 音部記号 加線 譜表の連合 によると、カーネギーホールのスタインウェイは 442Hz、ベルリンフィルやウィーンフィルは 445〜446Hz、NHK は 442Hz、だそうです。ふむー、やっぱり音には絶対基準があるようで、ないのですね。絶対基準は、演奏家の耳とその心にあるのかもしれません。

[2014.02.14 更新]
上記「表4.」に基づいて、「WaveGene」というフリーソフトでサイン波によるテスト音を作成しました。スピーカーの低音再生限界をチェックしたり、高音に対する自分の耳のテストをしたり、PA でのハウリング周波数を推定する練習などに活用できるでしょう。ちなみに、私の耳では 10,548Hz(E9)の音まではなんとか聞き取れますが、それより高い音は聞こえません。年のせいとは言え、かなりショックなことです。ためしに鳴らしてみてください。

test_00027_5Hz_A0.mp3 (236KB, 10")
test_00032_7Hz_C1.mp3 (236KB, 10")
test_00041_2Hz_E1.mp3 (236KB, 10")
test_00049_0Hz_G1.mp3 (236KB, 10")
test_00065_4Hz_C2.mp3 (236KB, 10")
test_00082_4Hz_E2.mp3 (236KB, 10")
test_00098_0Hz_G2.mp3 (236KB, 10")
test_00130_8Hz_C3.mp3 (236KB, 10")
test_00164_8Hz_E3.mp3 (236KB, 10")
test_00196_0Hz_G3.mp3 (236KB, 10")
test_00392_0Hz_G4.mp3 (236KB, 10")
test_00784_0Hz_G5.mp3 (236KB, 10")
test_01568_0Hz_G6.mp3 (236KB, 10")
test_03136_0Hz_G7.mp3 (236KB, 10")
test_06272_0Hz_G8.mp3 (236KB, 10")
test_08372_0Hz_C9.mp3 (236KB, 10")
test_09397_0Hz_D9.mp3 (236KB, 10")
test_10548_0Hz_E9.mp3 (236KB, 10")
test_11175_0Hz_F9.mp3 (236KB, 10")
test_12544_0Hz_G9.mp3 (236KB, 10")
test_14080_0Hz_A9.mp3 (236KB, 10")
test_15804_0Hz_B9.mp3 (236KB, 10")

音律による音階の周波数比較

前出の平均律、純正律、ピタゴラス音律の各音階の周波数を比較表にしてみました。ついでに、平均律に対する純正律、ピタゴラス音律の周波数のズレをセント値で表しています。

  表5. 音律による音階の周波数比較
音律比較

わずか 5〜6セントの違いが音の協和に影響するのですね。そういえば、ピアノの調律はどうするのでしょうか。平均律では完全5度も長3度も短3度も、どれも協和しません。440Hzの音叉で A(ラ)4 の音を合わせたとして、他の音はどうして合わせるのか。実は、やっぱり完全5度の協和音を使うのだそうです。完全5度の協和音で合わせておいて、数セントわざとずらすのだそうです。協和音から数セントずれると唸りが生じるのですが、その唸り具合で何セントずれたかが判るというのです。ほんと、バイオリン演奏家もすごいですが、ピアノの調律師もそれに劣らずすごいですね。

[参考ホームページ]
   純正律音階と平均律音階
   玉木宏樹 I N D E X

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